身近な自然と科学
  1. 病気の豆知識
  2. 心電図を読む

正常な心電図(心電図の基本形)

心電計で計測される電気は細胞の変化によって生じます。
細胞は細胞膜によって護られていますが、栄養素や電解質は必要に応じて通過できます。
電気の面で考えると、ナトリウムイオンとカリウムイオンが重要で、これらの分布状態で電位が変わります。

細胞の分極と脱分極とは

細胞が活動していないとき(静止状態)では、細胞内の電位に対して、細胞外の電位は高くなっています。
この状態を「分極」していると言います。
活動している細胞は、何らかの刺激によって、細胞内外の電位が逆転しています(細胞内の電位に対して細胞外の電位が低い)
電位の逆転の時間はどの細胞でも一定(数ミリ秒間)で、この状態を「脱分極」していると言います。 細胞外にたくさんあるナトリウムイオンを細胞内に取り入れることで脱分極します(ナトリウムチャネル)。
電位の逆転は細胞内を移動します(ナトリウムイオンとカリウムイオンの分布の偏りが細胞内を移動する)
神経細胞(一般的に細胞が糸状に長い)では細胞内の電位変化の移動で信号を伝えます。
神経細胞に次いで電位変化大きいのが筋肉細胞です。心臓は筋肉の塊なので、心臓の異常を発見するために心臓の筋肉から出る電気を計測する意味が出てきます。
なお、心臓は洞結節からの信号で動き出しますが、心停止している状態でも心臓マッサージをすれば心電計で電気は計測されます。

健常人の心電図

下記は健常人の心電図の基本形です。
正常な心電図
下図は心電図の1サイクル分です。これが健常人では一生涯繰り返されます

上図中のPは心房の収縮拡張により出された電気です。心房の動きは右心房から始まり、その後に左心房が動きます。それぞれから出る電気の合成したものが、P波として計測されます。
P波の幅は、心房の細胞が脱分極し始めてから全ての心房細胞の脱分極が終わるまでの時間です。
P波の幅は、0.1秒以内。P波の高さは、0.25mV以内が正常です。

心房は洞結節からの信号で動き出すので、次のサイクルのPまでの間隔が洞結節から出ている信号の間隔になります

P波の次に来る下向きの波はQ波、Q波の次に来る上向きの波はR波、その次に来る下向きの波はS波と呼ばれます。
QRSの波は、心室の筋肉細胞の脱分極によって生じています。
心室筋肉の興奮は、左右の心室を隔てている心室中隔の左心室側から始まり、中隔の右室側、右室、左室、心尖部(心房と心室が接する部分の反対側の心室の先端部)、心基部(心房と心室が接する部分)の順になります

異常が無ければ、QRS波の幅は0.1秒内です。
右心室は肺に、左心室は全身に血液を送り出す強力な筋肉なのでQRS波の高さ(脱分極によって生じる電圧)も大きくなります

QRS波に続いて起こるT波は、心室の筋肉の興奮が収まっていく状態(細胞の再分極)を表します。
再分極はカリウムイオンが細胞外に出ることによって起こります(カリウムチャネル)

T波の後、次のP波の前に緩やかな波が計測されることがあります。この波をU波と呼びますが、生じる理由は良くわかっていません

心電図を読むためには、各波の間隔に注目する必要があります
下図に描かれたものが重要な間隔です

基線は、P波の始まりから次のP波の始まりを結んだ直線で、各波形の高低は基線を基準に計測します

心電図を読み取るために注目する点

P波について
第二誘導法でP波を計測した場合
P波の幅の正常値は、0.06より大きく0.1秒以内
P波の高さの正常値は、0.25mVより小さい
(第二誘導法は、左足と右手首に電極を付け、左足の電位−右手首の電位 でプラスの波形としてP波は計測される)
PQの間隔は、0.12秒以上0.2秒以内が正常です

QRS波はP波のように単純ではありません
電極の付け方(誘導法)により波形の上下が逆転したり、疾患によって波形が崩れたり、波形が幾つも現れたりします
正常なQRS波の幅は、0.06秒以上で0.1秒より小さいです。
これより大きい場合は、心室を動かす信号が流れる経路(ヒス束・脚・プルキンエ線維と順に流れる経路)に異常がある可能性があります
また、心室の興奮は心房の興奮の後に対応して起こるものなので、P波とQRS波が1対1で対応にしているのが正常です

S波の終わりとT波の始まりを結んだ線であるSTは、高さが基線と一致しているのが正常です

QTの間隔(心室筋肉の興奮が起こってから冷めるまで)は、0.34秒以上0.4秒以内が正常です

T波の終わりから次のP波の始まりの間に緩やかな波(U波)は計測されないのが正常です
T波が平坦気味になりU波現れた場合は、低カリウム血症が疑われ、T波よりU波が高くなると重症です

P波と次のP波までの間隔、QRS波と次のQRS波までの間隔、心房と心室の興奮になりますが、1分間に60から100位が正常です


プライバシーポリシー

連絡先(fnas_web@yahoo.co.jp)